
『碧のかたみ (Holly NOVELS)』
昭和十八年。
全盛を誇る南の要塞・ラバウル航空隊に着任した六郎は、喧嘩に明け暮れている戦闘機乗りの琴平恒に出会う。
問題児だが優秀なパイロットの恒と「夜間戦闘機・月光」でペアを組むことになった六郎は、行動を共にするうちに
故郷の家族を守りたいという彼の深い思いと純粋さを知り、恒に惹かれていく。
命の危険と隣り合わせの日々の中で、二人は互いを大切なペアとして愛しく思うように。しかし、ラバウル航空隊にも
敗戦の足音が近づきつつあった。
前作『
天球儀の海 (Holly NOVELS)
』のスピンオフとのことで、これは、けっこう微妙だったので
(攻めの愛し方が)、
買おうかな、と迷ってたのですが、
尾上さんは好きなのでやっぱり購入。
よかったです。
もうずっと、この人たちは死ぬのか、生きるのか、
と最後の最後まで心配しながら読みました。
受けの恒がやんちゃで喧嘩っ早くて、
それを空のように広い心で受け止める六郎。
二人でペアになって戦闘機に乗ってお互いに
命を懸けている二人の信頼の厚さが
とってもよかった。
死にかけた恒を、医者に見せないといけないのに、
抱きかかえた腕から、離せない六郎。
頭ではわかってるのに、体が動かない。
そういう描写とか、もうなんというか、
重くて、息をつめながら読みました。
明日死ぬかも、今死ぬかも、
二人と一緒にそう思ってました。
そしてそう思うからこそ、お互いを思う気持ちは
よけい強まって、純粋になるわけで…。
海辺での線香花火のシーンとか、
恋に落ちた時の
「撃墜マークを書いていい。 …撃ち墜とされた気がする」
とか、私も撃ち落とされてしまいそうでした。
喧嘩ばっかりしている恒が六郎にだけ
どんどんなついていく姿もかわいかった。
口は悪いんだけど。
ベタベタに甘えたりもしないんだけど、
気を許していく過程がかわいかったです。
BLだけあって、戦場のドロドロはそんなになくて、
悲惨さも少ないです。何より、甘い。
そして最後は、書いちゃうけど、
大丈夫、ちゃんと幸せになれます。
ほんとに、よかった。
尾上さんの今までの中でいちばん。
戦争は、嫌ですね。
自民党の憲法の改憲案では、
「国防軍」の創設がうたわれています。
今まで憲法9条があるから、自衛隊は
他国で人殺しをしないでこれまできました。
けど、その歯止めがなくなったら。
「国防」という名のもとに、
この本でもそうだったけど、「内地を守るため」
といって、他国に戦争をしかけていくんです。
アメリカと一緒になって、他国を攻撃していくことになる。
「自分の国を守るため」と言って。
戦争をしたい人はいます。
お金儲けできるから。
でもそんなことで命を散らすのは下っ端の人間。
私たちの夫や息子たち。
そういうのは、イヤだなって思います。
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